お金の増加と幸せの増加は一致しない?
一定以上に収入が増加しても幸せは増加しないと言われています。
年収で言えば、800万円から1000万円を境に幸せ度の増加は減っていくと言われています。
この話は色々な記事で語られているので、知っている人も多いと思います。
しかし、なぜ幸福感がお金の増加に比例しないのかという事はあまり書かれている記事がありません。
今回は、お金の増加と幸福感について考察していきたいと思います。
目次
お金がもたらす幸福感
お金と幸福感は切っても切れない関係です。
正確に言えば、幸福感お金は直接的に関係しません。
例えばお金が100億円あったとしても、食べ物も服も家も自由もない場合は幸福を得ることはできないでしょう。
しかし、上で挙げた食べ物や服や家はお金で買う事ができます。
自由も時間と言う形でお金で買う事も可能です。
生活に必要な物が手に入ると幸福感も増えていきます。
お金があれば
・お腹いっぱいの食事をする
・冬の寒い時、暖かい服を着る
・雨や雪の日に、暖かい家で過ごせる
・夏の暑い日にエアコンの効いた家で過ごせる
と言った幸福感を増やすことができます。
逆にお金が無い場合
・ご飯が食べられない
・服が買えない
・隙間風だらけの家にしか住めない
と言った幸福感を阻害する要素が発生します。
幸福感は衣食住いがいにも影響する要素がたくさんあるので、必ずしも「お金が無い=不幸」ではありませんが、必要な物や欲しいものを所有しているかどうかでは幸福度は大きく変わると言っても差し支えないでしょう。
つまり「お金がある=幸福」という事です。
お金と幸福度の関係
お金が増えると欲しいものが手に入るので、お金の量と幸福度は比例するように思えます。
しかし、色々な統計を見ると年収800万円を超えたあたりから収入が増加しても幸福度は増えにくくなってきます。
お金が増えれば変える物も増えてくるのに、ある程度まで増えるとなぜ幸福度は増えないのでしょうか?
それは、持っていない物を手に入れるときと、より高級な物を手に入れる時では満足度が異なってくるからです。
空腹の状態で、何か食べ物を得られた時の幸福感は大きなものになります。
「腹ペコの状態で食べた食事は、とても美味しく感じる」皆さんも経験があると思います。
しかもファミレスでディナーを食べるより高級レストランでディナーを食べる方がより満足感が得られます。
ただ、腹ペコの状態で食事をするのと、日々の食事を高級レストランで食べるのではどちらの方が満足感は高いでしょう?
腹ペコの状態で食べる食事の方が幸福感は高いですよね?
腹ペコの状態は、大袈裟に言えば生命の危機に陥っている状態です。
しかし、食事の内容(場所やメニュー)は質の部分なので、切実な問題にはなりません。
食事以外も同様です。
公共交通機関が発達していない所では、車は生活必需品です。
したがって、車を手に入れた時の満足度や幸福感は非常に高くなります。
しかし、国産のファミリーカーから高級外車に買い替えた時も満足度や幸福感は初めて車を所有した時と比較すると、そこまで高くなりません。
つまり、所有している物の価値(安物か高級品か)で幸福度はあまり変わらないと言う事なのです。
しかも高級品を購入した時は、満足度は高くなるが、所有して暫くして所有している事に慣れてくると満足度は下がっていき、最終的には安価な商品を所有している時と同じレベルまで下がってしまいます。
例えば、冬にダウンジャケットを購入するケースを考えてみましょう。
安価なダウンジャケットを購入する
冬服として、ユニクロのダウンジャケットを買いました。
ダウンジャケットは大変暖かいので、大変満足ですし出かけるのも楽しくなります。
安価なダウンジャケットですが、大変暖かく軽くて肌触りも良いので大変満足します。
初めてダウンジャケットを所有した人は、画期的で最高の商品だと思うでしょう。
しかし、日が経つにつれ満足感は減少していきます。
ダウンジャケットの性能はほとんど変わっていませんが、暖かく快適な服を着るのが当たり前になるためです。
もちろんダウンジャケットが無い生活はあり得ないので、服を購入したことを後悔するような事はありませんが、もっと良い商品が欲しくなってくるかも知れません。
高級なダウンジャケットを購入する
より高級なダウンジャケットが欲しくなり、モンクレールのダウンジャケットを購入しました。
価格はユニクロのダウンジャケットに比べると100倍くらいしますが、触れただけで高級感がわかります。
体にフィットするデザインで、繊細な生地にフワフワのダウンが入っています。
二の腕の部分にはブランドロゴが付いており、高級ダウンジャケットであることを周囲にアピールしています。
高いだけあって着心地も最高ですし、心なしか周りの注目度も高い気がします。
出歩くのがより一層楽しくなりました。
しかし、日が経つにつれ満足度は減少していきます。
確かに着心地は最高ですが、それが当たり前になる為です。
安価なダウンジャケットに比べて質もデザインも良いのは確かですが、100倍の満足度が得られるのかと言われると微妙なところです。
生活必需品が揃うと幸福度は上昇しにくい
必要な物を手に入れた時の幸福度の上昇と、所有する物のグレードが上がった時の幸福度の上昇では、上昇率が異なる事が理解できたと思います。
普段の生活で必要な物をすべて揃えて、維持するのにはある程度の収入が必要になってきます。
その金額がおおよそ年収800万円~1000万円なのです。
年収が1000万円あると、生活必需品は全て手に入れることができますし、品質も満足できるものが手に入ります。
つまり、不自由と言う感覚がなくなってきます。
不自由と言う感覚が解消されると、次は生活の質の向上になるのですが、質の向上で得られる幸福度は不自由に比べると上昇しにくいと言うのが実験結果で分かっています。
ハーバード大学で、自家用車通勤をしている人に対して、通勤時の充実度を車の車種毎に比較すると言う実験を行いました。
結果は、通勤時間の充実度と車の価格は比例しないという事がわかりました。
2万ドルのファミリーカーでも10万ドルの高級車でも、通勤時間の充実度は同じだったと言う事です。
今まで書いてきたことをまとめると、
生活必需品を手に入れていく間は幸福度は急激に上昇していくが、生活必需品が揃うと幸福度の上昇はゆっくりとなる。
という事になります。
満足度を高く維持するには
今までの説明で物を買う事で幸福度が上がらないという事がわかってきたと思います。
年収が増えても幸福度が上がらないなら、年収1000万以上は必要ないのか?と言う疑問が湧いてきます。
結論から言えば、収入が増えるだけ幸福度が上がるケースもあります。
それは、体験や経験を増やしていく方法です。
人は、物を購入するより新しい体験をするほうが幸福を感じ、幸福度が長続きするという事がわかっています。
物を所有(消費)する時の満足度
ハーバード大学で次のような実験が行われました。
「自宅の夕食で高級な牛肉を食た時、その幸福度がどれくらい継続するかを計測する」
幸福度は、牛肉を出された時がMAXとなり、食事をする時から徐々に下がり始めます。
食事を終えるころにの満足度は、当初の70%くらいに下がり、翌日には半分以下、数日後には高級牛肉を食べる前と同じ状態になりました。
腕時計を購入した場合も同様で、満足度は腕時計を購入している瞬間がMAXになり、購入直後から満足度はどんどん下がっていきます。
1週間を過ぎた頃には腕時計の購入前の満足度まで戻っています。
中には、腕時計購入前より満足度が低くなってしまうケースも見受けられました。
つまり、物を所有したり消費する場合、満足度は消費する直前をピークに下がり続け、暫くすると物を所有する事の満足度はゼロに近くなるという事がわかったのです。
体験する時の満足度
次に物を買うのではなく非日常的な体験について満足度がどのように変化するかを実験します。
「今まで行ったことの無い場所に旅行に出かけ、その幸福度がどれくらい継続するかを計測する」
幸福度は旅行の計画を立てはじめる頃から上昇し始めます。
旅行に出発する頃から満足度がMAXになり、旅行中もほとんど下がる事はありませんでした。
帰宅の途についたころから満足度が下がり始め自宅に戻る頃には70%くらいまで下がります。
ここまでは物を所有する時の満足度と大きな差はないのですが、その後時間が経過しても満足度はほとんど下がりませんでした。
数ヶ月経った後でも、満足度は50%以上を保持しています。
旅行で得た体験が想い出となって心に残っているため、満足度が下がらないのです。
つまり、心に残るような体験をした場合の満足度はずっと残り続けるという事がわかったのです。
これは旅行だけでなく、映画やコンサートでも同様の事象が起こる事がわかっています。
不思議な事に、物として残る買い物をした時より、物としては残らない体験をした方が満足度は上がると言う事なんです。
旅行やコンサートなどの体験以外にも、寄付をする事も満足度が継続する事もわかっています。
買い物や旅行のように高い満足度は得られにくいようですが、一定の満足度が残り続けるのです。
満足度が高まる買い物
それでは、買い物は満足度を上げる事はできないのか?
実は買い物でも満足度が上がるケースがあります。
それは、実用以外の価値を求めて購入するケースです。
車を例にとって説明しましょう。
車を買う目的として、通勤や買い物の足として購入する場合は車の車種と満足度は比例しにくいと言う結果が出ています。
ベンツで買い物に行くのも、軽四で買い物にいくのもそれほど満足度に違いは発生しません。
買い物に行くのが目的の場合、どんな高級車でも煩わしさはあっても満足度は上がらないのです。
ただ、これは車好きの人からすると間違った解釈と思われるかも知れません。
車を買う目的が、ドライブに変わった場合はどうなるでしょう?
休日、車に乗って山道をドライブする事をイメージしてみましょう。
曲がりくねった道をハンドルを操り、時にはブレーキやアクセルでスピードコントロールしながら走り抜けていきます。
買い物に行く時より複雑で繊細な操作が必要になりますし、集中力も必要になりますし、精神的にも肉体的にも疲れる行動をしていますが、ドライブが好きな人にとって、満足度が高く幸せな時間になると思います。
軽四でドライブするより、スポーツカーでドライブする方が満足度は高くなりますし、何度運転しても高い満足度が維持されると思います。
もうわかったと思いますが、車を操ると言う体験をしたために高い満足度が維持されるのです。
まとめ
物を買うと言う行為は満足度を高めるのは限界があると言う事がわかりました。
生活必需品が揃ってしまうと、購入する物が高給になっても満足度はほとんど上がりません。
服に興味はないけどお金があるからと言って高級な服を購入してもほとんど満足度は上がらないのです。
食事でも同様で、何か食べたいと言う理由だけで高級レストランで食事をしても満足度は上がりません。
しかし、同じ食事をする時でも
・微妙な舌触りや素材の味
・盛り付けの美しさ
・食器のこだわり
・スタッフの対応や窓からの景色
を楽しみながら食事をすれば、満足度はどんどん上がっていきます。
周りのお金持ちを見ていると、幸せそうにしているお金持ちが居ると思います。
そういう人は、物にお金をかけるのではなく、体験にお金をかけているのです。
良い体験が積み重なると、満足度や幸福度も比例して増えていきます。
また、体験はお金がなくても出来る事がたくさんあります。
体験を増やすことで、より幸せな人生を送れるのです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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