投資と投機(投機は悪?)
投資と投機は似ていますが、微妙に定義が異なります。
投資はいいけど投機は悪いと言う考え方の人も多いと思います。
今回のコラムは、投資と投機の定義と、投機の是非について考えたいと思います。
投資の定義
Wikipediaでは、
投資(とうし、英: investment)とは、主に経済において、将来的に資本(生産能力)を増加させるために、現在の資本を投じる活動を指す(現代において、生産能力の増加しない商業活動はこれに含まない)。広義では、自己研鑽や人間関係においても使われる。
どのような形態の投資も、不確実性(リスク)が伴う。一般に、投資による期待収益率が高い場合、不確実性も高まる。この一般則に反する取引が可能な場合、裁定取引が行われ、収益率の低下またはリスクの増大が起こる。
と記載されています。
金融における投資では、経済または経営主体が、自己資本に加えて、追加的な他人の資本を調達することで、より大きな利益を得る事が出来ます。
投資と言うのは、投資した資本が生産活動を増加させることです。
株式投資では投資家が株券を購入する事で、株券の購入代金が企業に入り、企業の生産活動を助け、その対価として、利益の一部を投資家に還元されます。
債券も、債券を購入する事で、発行企業の資金調達を助け、その対価として利息を受け取ります。
投機の定義
Wikipediaでは、
投機(とうき)とは、短期的な価格変動の目論見から、利ざやを得ようとする行為。もともとは禅の仏教用語であり、師弟の心機が投合することを言う。投機を表す英語: Speculationには、思索・推測の意味が含まれている。
マネーゲーム (money game) の一種とも言われ、ギャンブルに含まれる場合がある。
と記載されています。
金融における投機は、株価が大幅に値下がりした時のリバウンド狙いの買付や、FXなどの為替取引で、為替レートの変動を狙った売買が挙げられます。
株価のリバウンド狙いや、為替レートの変動を狙った取引は、起業や国の生産活動に直結せず、金融商品の売買の利ざやを得る行為なので、投機に分類されています。
投機は悪なのか?
ここからがこのコラムの本題です。
世の中には
投資 = 善
投機 = 悪
と言うイメージが出来上がっていると思います。
投資は経済発展に貢献しているが、投機は経済を乱している。
投機はゼロサムゲームだから、強者が弱者からお金を奪っている。
と言うのが一般的な理由です。
投機が経済を安定させている
本当に投機は経済を乱しているのでしょうか。
よくやり玉に挙げられるのは、株の信用取引の売り(通称:空売り)です。
これから株が値下がりするの予想した時、その株を持っていなくても、株を借りて売却し、値下がりした際に買い戻して、株を返却すると言う取引です。
空売りが株の値下がりを誘発する原因を作ることもあるでしょう。
しかし、空売りだけが株価を下げる原因ではありません。
その証拠に、空売り対象外の銘柄でも株価の大幅な値下がりがあるので、株価の値下がりはマイナス材料が一番の要因であることは明確です。
認知度は低いのですが、株価の下落を止める大きな要因に、株の空売りがあります。
空売りは株を売っているのに、株価の下落を止められるはずがない!
と考える人も多いと思いますが、株価が下落すると以下のような事が起こっています。
大きなマイナス材料が発表されると、誰もその銘柄を買おうとしません。
買い手が居ない状況では更に株を手放す人が増えていき、売りが売りを呼ぶ状態に陥ります。
買い手は様子状態で、相場が落ち着くのを待っています。
そんな時でも、買い注文を出す投資家が出てくるのですが、どのような人かと言うと、「空売りをしている投資家」です。
空売りをすると言う事は、買い戻す必要があります。
株価の下落に、新規の買いポジションを持つのは大きなリスクになります。
しかし、売りポジションの解消は利益確定なので、リスクはありません。(厳密には機会損失と言うリスクはありますが)
相場が一方的に動いた時、その動きを止めるのは、投機の売買なのです。
為替取引を見てみましょう。
為替取引の場合は投資と言う要素は少なく、「実需」と「投機」に分かれます。
実需とは、海外旅行に行くときに、円を海外の通貨に交換したり、日本の企業が海外で得た売上金を日本円に交換する事です。
投機は、FXのように為替レートの変動を狙って短期的に利益を得る事です。
2017年の世界の為替取引は、およそ9割が投機の売買だったと言われています。
実需の売買が1割あるのなら問題ないと思われるかも知れません。
通常の少額の通貨取引なら、実需だけでも対応かのうでしょう。
しかし、大企業の決済や海外企業の買収などで、大量の外貨が必要になった時は実需の売買だけでは流通量が足りません。
日本の企業が海外企業を買収した際、大量の外貨を両替しましたが、その両替は投機マネーによって対応しています。
実需のみの取引だと、為替レートを数円単位で動かす取引量ですが、投機マネーがあったおかげて為替レートへの影響はほぼゼロでした。
このように、投機は経済の安定に貢献しているのです。
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