前回は「ベーシックインカムの導入とメリット」を書きました。
メリットがあれば、デメリットもあります。

今回はベーシックインカム(以降BIと呼びます)が導入された時のデメリットを考えてみましょう。

 

ベーシックインカムのデメリット

BIが導入され、無条件にお金が貰えると言う社会が出来た時、色々な問題が起こる可能性があります。
デメリットと言うより、BIの問題点に近いかも知れません。

 

財源が底をつく

日本国民全員に毎月10万円を支給すると仮定すると、BIの予算は以下のようになります。
・10万円×12か月=年間120万円/人
・国民一人あたり120万円×1億人=120兆円

BIを導入する場合、年間120兆円の予算が必要になります。
2017年度の税収は57.7兆円なので、全く足りないと言う事になります。

この時点でBIは成立しない事になりますが、
・BIの導入で企業の利益増加に伴う税収増加
・消費税の増税による税収増加
・20歳未満の支給を5万円にするなど、BIの支給基準の見直し
により、財源は確保できるのではとも言われています。

ただ、起業の増益は実際に施行されなければわからない部分があるので、財源の不安を解消する事は難しいでしょう。

 

労働意欲の低下

BIの導入で、生活に必要な最低限のお金が保証されることになります。
言い換えれば、仕事をしなくても生きていく事が出来ます。
今までの働く理由が、「生きていくため」であれば、働く理由がなくなります。

従って、BIの導入で働く人が減少する可能性があります。

特に、
・危険な仕事
・重労働
・単純作業
については人手不足が深刻化すると思いますし、人手を確保するには報酬を上げるなどの対策が必要で、企業利益の圧迫や製品価格高騰の可能性が発生します。

ただ、上記の仕事は機械化しやすい分野になるので、機械化を進めることで対策が出来る部分でもあります。

また、BIで保障されるのは最低限の生活なので、遊んだり、衣食住のレベルを上げるのなら何らかの収入を確保する必要があります。
最低限の生活が保障されるので、仕事への考え方が

「生活するためから充実した生活を送るため」

に変わっていくと予想されます。

 

最低賃金の低下

現在の日本の最低賃金は、おおよそ「1000円/時」程度になっています。
これは、時給1000円以下では最低限度の生活が送れないと言う計算ので設定されている金額です。

しかし、BIで最低限度の生活が保障されるので、最低賃金の引き下げが行われる可能性が高いと考えています。
もしかしたら、最低賃金の規制自体が撤廃されるかも知れません。

日本の国籍所持者は問題ありませんが、海外から出稼ぎに来ている労働者は堪ったものではないでしょう。
物価の高い日本で収入を得て自国の家族に仕送りしたり、日本に勉強のために留学した人が、アルバイトなどで生活費を稼ぐのは非常に難しくなります。

平均賃金が今までの半分になっても、日本国民は生活に窮する事は少ないでしょう。
しかし、日本国民以外の日本で生活している人にとっては死活問題になります。

だからと言って、日本に住んでいる全ての人にBIを支給すると、色々な国から日本移住する人が殺到する事が予想されます。

最低賃金の引き下げは、
・企業の利益増加
・製品の値下げによる国際的な競争力強化
と言ったメリットもありますが、外国からの留学生や出稼ぎ労働者にとっては、デメリット以外の何物でもありません。

 

格差の拡大

BIが導入されると、働く人と働かない人が出てきます。
まず、働く人と働かない人の間で格差が発生します。

次に、働く人の中でも、格差はどんどん広がっていくと予想されます。

誰にでも出来る仕事は、現在の最低賃金以下の収入しか得られないと思います。
しかし、出来る人が少ない仕事は、高い報酬が得られるようになるでしょう。

特殊な技術を持った人が、より多くの収入を得られるようになりますし、企業オーナーや株主も企業利益の増加の恩恵を受けて、より多くの収入が得られるようになると予想されます。

 

まとめ

BIの導入で、金銭的に不幸な人はゼロに近くなると予想されますが、日本人(日本国籍保有者)以外はデメリットが多い制度になりそうです。
日本人にとっても、BIの導入で幸福になれる人はどれくらい居るのでしょうか。

また財源の確保は、色々なシュミレーションがなされていますが、足りるのか足りないのか意見が分かれている状態です。
労働者人口がどのように変化するかも実施しなければわからない部分が多くあります。

アメリカやフィンランドなど、小規模な範囲でBIの導入テストを実施している国があるので、テスト結果にも注目していきたいですね。