アービトラージ(Arbitrage:裁定取引)
アービトラージ(Arbitrage:裁定取引)とは、複数の市場で一時的に価格差が発生した際に、価格の安い市場で買い付け、価格の高い市場で売却して利ざやを稼ぐ行為を言います。
概要
例えば、複数の取引所で上場している株があります。
IHIやトヨタ自動車は、東京証券取引所と名古屋証券取引所に上場しています。
(他にも多数の企業が複数の取引所に上場しています)
東京証券取引所・名古屋証券取引所で個別に取引されているので、株価も瞬間的にで異なる価格で取引されます。
例えば、トヨタ自動車の株が、
・東京証券取引所:6500円
・名古屋証券取引所:6501円
と言うような状態になります。
この場合、東京証券取引所で6500円で買って名古屋証券取引所で売れば1円の差額を利益として残すことができます。
(実際は取引手数料が掛かるので、利益はもっと少なくなります)
各取引所の価格は常に変動しているので、単純に価格差を狙って売買しようとしても、東京証券取引所で買った瞬間に名古屋証券取引所の価格が下がることもあります。
特に現在はインターネットで各取引所の価格を常に見ることができるので、価格差が発生してもすぐに解消されますし、1円程度の価格差で利益を出すには「数万株~数百万株」の売買が必要です。
株数が増えると約定しない可能性が高くなるので、株式売買の世界では誰もハイリスク・ローリターンな取引は行っていないでしょう。
昔(インターネットが普及する前)は証券会社の窓口に行かなければリアルタイムの株価を知ることが出来なかったので、信用取引を利用した裁定取引を行っている人も居たそうです。
今でも実現可能な裁定取引
株式市場では実現が難しくなった裁定取引ですが、現在でも実現可能な場面は残っています。
ポイントは、「同じ商品が複数の市場で取引されている」と言うのが裁定取引を満たす条件になります。
それでは、どのような商品があるのかを見ていきましょう。
先物市場と現物市場を使った裁定取引
複数の取引所を使用した裁定取引は現実的でないと書きましたが、現物市場と先物市場を使用する方法があります。
取引の方法は取引所間の裁定取引と同様ですが、「株価指数」と言う流動性が非常に高い商品を対象に出来る点が取引所間の裁定取引と異なります。
流動性が高いと、大量の注文を受付ける事が出来るので、一度の取引で数百万円と言う利益を得ることが出来ます。
(ただし、数百万の利益を得るには数百億円と言う資金も必要ですが。。。)
先物市場と現物市場を使用した裁定取引は、以下の手順で行います。
① 株価指数(例えば、日経225)の価格が、「先物市場 > 現物市場」となるのを待つ
② 「先物市場で売り かつ 現物市場で買い」を行う。
③ 日経225の価格が、「先物市場 ≦ 現物市場」となるのを待つ
④ 「先物市場で買い戻し かつ 現物市場で売却」を行う。
上記の方法を使えば、「②と④」のタイミングがズレなければ、利ざやを得ることが出来ます。
ただし、価格差は最大でも数十円であることが多いので、1万円の利益を得るには、数千万円の資金が必要になります。
株価指数を使った裁定取引は、機関投資家が行っている取引ですが、積極的に取引をすると言うより、先物と現物の価格差が一定以上開いたら自動的に売買するような仕組みを作って運用しているようです。
外国為替証拠金取引
株価指数の取引は大量の資金が必要になりますが、もう少し現実的な資金で利益を得る方法もあります。
それが、「外国為替証拠金取引(FX)」の裁定取引です。
FXはインターバンク市場の取引価格を基に、FX業者が独自の価格を提示していますが、FX業者によって微妙に価格が異なっています。
例えば、米ドル/円の為替レートが
業者A:110.01円売、110.04円買
業者B:110.07円売、110.10円買
と言ったように提示価格が異なる時があります。
このFX業者間の価格差を利用した取引で、上記の例では
業者A:110.04円で買い
業者B:110.07円で売り
を同時に実施します。
あとは、業者AとBの価格差がなくなった時点で双方のポジションを決済すれば、0.03円の利益が発生します。
1万通貨で取引した場合は300円の利益ですが、100万通貨で取引すると3万円の利益になります。
FXの場合はレバレッジが使えるので、レバレッジ20で取引すると、各FX業者に500万円強の証拠金を預ければ取引が可能です。
しかも、0.03円程度の価格差は一日に何度も発生するので、運が良ければ数十回の取引が可能です。
(パソコンの前で常にスタンバイする必要がありますが。。。)
実際に実践している人も居る、ある意味有名な裁定取引です。
番外編
最後に金融系の取引ではありませんが、日用品や家電などの物販は裁定取引が頻繁に行われています。
例えば、空気清浄機と言う商品は、家電量販店やスーパー、メルカリ等、複数の市場で取引されています。
流動性が少ない商品なら、市場毎の価格が大きくなる傾向があります。
通称「せどり(背取り)」と呼ばれていますが、
・近所のスーパーで格安で売られている商品を買って、メルカリ等のインターネット個人売買などで売却する。
・ヤフオクなどのオークションで安く仕入れて、メルカリ等のインターネット個人売買などで売却する。
と言った手法です。
裁定取引と言うかは微妙な取引ですが、異なる市場で同じ商品を売買すると言う意味で、ご紹介しました。
最後に
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
裁定取引は他にもできる場面は多々あります。
機会があればこのページに追記していきたいと思います。
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