お金についての勉強会
今回は「価値の交換」について考えていきましょう。

買い物をするための道具としてのお金

お金の機能の一つに「価値の交換」と言う機能があります。
通常の買い物をする時の事を考えてみましょう。
何かを買うときは、商品と引き換えにお金を払います。
売る側が認めればお金以外の物で支払う事もできるのですが、ほとんどの場合はお金を使って支払いをします。
お金は買い物をするための道具としての機能を持っているという事がわかると思います。

なぜ、みんなお金を使って買い物をするのでしょうか?

それでは、お金を使わずに自分が欲しいものを手に入れる方法を考えてみましょう。

 

相手の欲しいものと自分が欲しいものを探す

欲しいものを手に入れようとする場合、相手に何を渡せば取引に応じてくれるでしょうか?
食べ物や衣服、何かのサービスかも知れませんし、車や土地かも知れません。


自分が欲しいものを手に入れるとき、相手が欲しがるものを渡せば交換に応じてくれるので、お金以外でも取引は成立しそうですよね。
物々交換の時代は、自分の欲しいものと相手が欲しいものを交換する事で取引が成立していました。
しかし、今の世の中は物々交換はほとんど行われずにお金を通じて取引が行われています。
それはなぜでしょうか?

結論を言えば、相手が欲しいものと自分が欲しいものが一致しなければ取引が成立しないからです。

例えば、とある商店街に買い物に出かける事を想像してみましょう。

彫刻家の太郎さんは服とカバンと靴を買いに行きます。
買い物をするために自分が作った作品を持っていく事にしました。

最初に入ったA商店で、気に入った服とカバンを見つけたので、彫刻と交換する事になりました。
店の人は太郎さんの彫刻を大変気に入ってくれ、お互い満足できる交換ができました

次に靴を探しにB商店に入ります。
気に入った靴が見つかったので、彫刻と交換する事にしましたが、B商店の店主は彫刻には興味が無いようです。
太郎さんは店主と交渉を続けましたが、結局交換出来ずに帰る事になりました。

A商店ではお互いの欲しいものが一致したので取引が成立しましたが、B商店では欲しいものが一致しなかったので取引が成立しなかったのです。

また、欲しいものが一致したからと言って取引が成立するとは限らないのが物々交換です。

太郎さんが土地を買いたいと思っても、彫刻作品を数点持って行ってもほとんどの相手は交換に応じてくれないでしょうし、ペットボトルの水を買うのに彫刻と交換するのは太郎さんの割に合いません。

物々交換をするためには、お互いが欲しがるものと数量が一致している事が必要になるのです。

つまり、自分が欲しいものを相手が持っていて、相手が欲しいものを自分が持っていると言う条件が満足するまで、取引相手を探し続ける必要があります。
インターネットが普及して、世界中の人から交換相手を探すことが出来る現代でもお互いの欲しがるものと数量が一致する取引相手を探す事は非常に困難です。ましてや自分の周りの人としか情報交換ができなかった時代では、取引は限られた商品のみの取引になっていたと思われます。

 

誰もが欲しがるもの

それでは、太郎さんの話に戻りましょう。

靴を売っていたB商店の店主は、金や銀に興味がある事がわかりました。
また、A商店の店主も金や銀に興味がある事がわかりました。

金や銀は興味がある人が多いと言う事は、金や銀を持っていれば取引に応じてもらいやすいと言う事です。
そこで太郎さんは金や銀を集めて、再びB商店へ靴を買いに行きました。
今度はB商店の店主も喜んで取引に応じてくれたので、無事に靴を手に入れる事ができました。

 

細かく分割できること

金や銀を使って欲しいものを買う事ができた太郎さんですが、また問題が発生します。

高価な商品を買う時は金や銀と交換すればよいのですが、水や鉛筆などの安価な商品を買うのに金は勿体ないです。
そこで、色々な大きさの金や銀を持つようになりました。
大きさだけではわかりにくいので、1g、5g、10gと重さを書き込むようにすると、取引も大変スムーズになってきます。
金や銀や銅なら多くの人が取引に応じてくれるという事がわかったので、太郎さん以外の人も金や銀や銅を取引に使うようになります。

取引が頻繁に行われるようになると、金や銀や銅の価値が決まってくるようになります。
「金は銀の10倍の価値があり、銀は銅の10倍の価値がある」
と言うように交換する基準が決まっていきます。

次第に、
・高価な商品は金を使う
・普段の買い物は銀を使う
・安価な商品を買う時は銅を使う
と言うようなります。

金・銀・銅を持っていると、ほとんどの商品と交換できると言う事が広く浸透すると、余った物や生産した商品は、金・銀・銅に交換すると言う行動に移ります。

これが、「価値の交換」です。

太郎さんの例で例えると、彫刻は今後何かと交換する事になるのですが、今は特に必要な物はありません。
必要な物が出来た時に彫刻を売っても良いのですが、今のうちにお金に換えておけば必要な物が出来た時も簡単に手に入れる事ができるので、まずはお金に交換しておくと言う事です。

価値を蓄える

お金の機能の一つである「価値の交換」は、価値を蓄える事に使うことが出来ます。
・長期間保存できない物
・価値が変動する物
・時間や知識
は、物として所有するにはリスクがあります。
誰かが価値を認めた時にお金に換える事で、価値を残すことができるのです。

抽象的な表現なので、例を見ながら説明していきましょう。

保存が効かない物

野菜などの農産物は収穫してから消費するまでの期間が限られています。


農家などの生産者は、野菜が取れた時は色々な物と交換する事が出来ますが、日数が経つにつれ野菜の鮮度は落ちていくので、価値は下がっていきます。
価値が下がるだけでなく、腐ってしまうと売れなくなってしまいます。
物々交換だと、収穫した野菜を販売するのも手間がかかるので、大量に作っても余って腐らせてしまうので、生産量を上げるにも限界があります。
一年を通して色々な種類の野菜を作ると言う方法もありますが、夏と冬では収穫量が変わってくるので、収穫が少なくなる冬場は厳しい生活を強いられるようになります。
そこで、作った野菜をお金に換えると言う方法をとる事で、収穫の少ない冬も蓄えてあるお金で必要な物を買えば夏と同じ生活を維持する事ができます。
物々交換で、違うものと交換する事と比べても、交換した時の失敗(必要ないものと交換してしまう)が少なくなりますし、置き場所も少なくて済みます。

価値が変動する物

魚や動物の肉は冬になると収穫量が減るので、価値が高くなる事があります。


もしも、冬に動物や魚が余っていたら、価値が高くなった時にお金と交換しておけば、高い価値を保存する事ができます。
再度必要になれば、安くなった時に買い戻せばよいですし、差額は他の物の購入費用に使うことが出来ます。
売った時より更に価値が上がる事もあり得ますが、余っているのを売る場合は実質的な問題は起こりません。
物々交換でも価値が高い時に、他の物と交換する事は可能ですが、売る物と買う物の価値の変化を考えなければならないので、取引を失敗するリスクが高くなります。

時間や知識を交換する

お金と交換できるのは物だけではありません。
労働と言う形で自分の時間やスキルをお金に換えることができます。
例えば、野菜を作るのを手伝えば、労働の報酬としてお金を得ることが出来ますし、自分の持っている知識を人に教える事で、報酬としてお金を得ることができます。
労働で報酬を得る場合、労働する時間によって報酬の金額が決まる事が多いので、1日に得られる金額は限界があります。
お金が必要な時に困らないように、自分の時間が空いている時に働いておけば、お金と言う形で自分の労働の成果を蓄える事ができるのです。

まとめ

お金と言うものは、変動する価値を固定したり、形のない価値を見える形で固定する機能がある事がわかったと思います。
価値を固定するという事は、増えもしないし減りもしないという事です。
資産をお金に換えてしまうと、価値が固定されてしまうので、リスクがなくなる代わりに資産は増えなくなるという事になります。

言い換えると、お金を増やしたいのなら、お金を貯めると言うのは適切な方法ではないと言う事もわかってきましたね。
お金を貯めるのは、増えた資産を固定すると言う行為で、お金を増やすには資産を増やす必要があるという事です。

貯金の残高を増やす努力も大切ですが、それ以上に資産を増やしていく事が大切だという事を書いて今回の記事を終わりたいと思います。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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